Cedep 発達保育実践政策学センター

第4回 発達基礎科学セミナー

日時
2016年11月21日 (月) 15:00〜16:30
場所
東京大学工学部 12号館408号室
講演

「哺乳類の冬眠とは?~冬を乗り切るための代謝変化のメカニズム」

山口 良文 (東京大学大学院薬学系研究科)

参加者の声

「異温動物」という言葉さえ初めて聞く言葉だった。冬眠という単語自体は子供の頃から聞き慣れた言葉だったが、科学的な視点から冬眠を考えたことは恥ずかしながら一度もなかった。今回山口先生のお話を聞いて、やはりまだ冬眠については実験・観察の難しさもあり明らかになっていない事柄が多いのだなぁというのが率直な感想だったが、冬でなくても冬眠することができるハムスターを使うことで今まさにユニークで面白い冬眠のメカニズムが明らかになりつつある現状も肌で感じた。個人的に一番気になったのは年周リズムの話だ。結果が出るのが10年後なのでなかなか研究が進展しないと嘆かれていたが、外界からの刺激がない状況におくと冬眠のリズムが個体によってズレてしまうというのは生物の基礎をなす大事なメカニズムなのではないかと思った。また年周リズム以外にも、低体温耐性機構など冬眠には人にとっても有用な示唆が多く含まれているとのことだったが、先生自身はヒトの発生と絡めた研究を計画していると聞いて、最後まで新鮮な情報だらけのセミナーだった。

「冬眠」という、誰でも知っているような現象が実はまだまだ謎に包まれていること、そしてそれを解明していくことが非常に広い範囲にわたって学術的な意義をもたらす可能性があることが深く印象づけられました。「睡眠」も同様に身近でありながら不明な点が多い(かつ研究も盛んに行われている)現象ですが、「冬眠」と「睡眠」を比較することにより、それぞれが持つ機能やメカニズムの特性を浮き彫りにできる可能性も感じられました。一般的な発想では、「冬眠とは動物が冬に長く眠ること」くらいに考えてしまいがちですが(実際私はぼんやりとそんなイメージを持っていました)、冬眠している動物も時々中途覚醒し、中途覚醒している間にわざわざ「睡眠」をとるという現象があるというお話などを聞いて、私自身の「冬眠」のイメージが気持ち良いくらいに塗り替えられた思いがしました。私自身はヒトの行動や認知が進化的にどのように形作られてきたかという問題に興味を持っているのですが、「冬眠」という一見ヒトとは縁遠いような現象が、実はヒトにまつわるあらゆる現象に関連しているかもしれないということを知り、私の興味にとっても全く新しいアイデアの源と思わぬところで出会えたように感じています。

冬眠のメカニズムについて詳しくお話しいただき、とても興味深かった。睡眠とは全く別で考える必要があり、ヒトの母体や胎児のもつ様々な生体リズムについてもヒントになることが多かった。

動物により、内的要因と条件的要因による冬眠があることを初めて知りました。(すべて条件によって冬眠に入るものと思っていたので)

「生命の神秘」の追求という点で冬眠研究の面白さが大変伝わった興味深いお話でした。その仕組み・意義含めまだまだ未解明の部分が多く、しかし現実的にはイメージしやすい部分もあり、知的好奇心をくすぐられました。

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