Cedep 発達保育実践政策学センター

第1回 発達保育実践政策学セミナー

日時
2015年4月22日 (水) 18:00〜20:00
場所
東京大学教育学部 第一会議室
講演

「プロジェクト概要の説明」

秋田喜代美(東京大学大学院教育学研究科)

教育学研究科を中核としたH27年度概算要求プロジェクト「乳幼児発達科学に基づく保育実践政策学の創成」に関して、これまでの経緯、今後の活動の方向性 についてお話いただいた。「発達」、「乳幼児」、「保育」、「実践」、「政策学」、「知のイノベーション」をキーワードとし、様々な領域の人や場所や時間 をつなぐ挑戦であるとのご説明があった。また、対象が多様であること(こども、家庭・職場・地域、保育者・教師・養育機関、園施設・学校・地域、国・自治体)も本プロジェクトの特徴である。H27年度は、関連する研究者や実践者が、得意とする・実現可能なアプローチ方法や立場で本プロジェクトに関わり合い、議論を深めていくことを呼びかけられた。また、その柱として、1. 保育に関する調査研究、2. ブレインストーミングと研究計画の絞り込み、3. 乳幼児保育実践者との連携、4. 進行中の研究の推進、が挙げられた。

「発達保育実践政策学の役割」

大桃敏行(東京大学大学院教育学研究科長)

本年度から研究科長となられた大桃先生より、本プロジェクトの役割をどのように考えることができるか、というお話をいただいた。「研究の社会貢献と学問領域の細分化」に関して、貢献のスパン、レベル、内容に関する様々な見方・立場、研究分野の細分化を克服した、「歴史」や「文明」を俯瞰することができる研 究としての展望、分野を越えた協働と知の統合についてのお話をいただいた。また、「就学前教育・保育への着目と公共政策の守備範囲」に関して、米国の事例 をご紹介いただきつつ、就学前の教育・保育は「公」、「民」、「私」のクロスする領域であること、制度の多様化に潜む問題点等についてお話いただいた。さらに、「発達保育実践政策学の役割と性格」に関して、役割として1.諸科学に基づく発達メカニズムを基盤とした「保証すべき保育・教育の質」の解明、2.発達保育環境の整備に向けた課題の解明と改善モデルの提示、公共政策の守備範囲と内容、3.公共事業の担い手と担い手間の協働のありようの解明であることを御提言いただき、その役割を果たす際に公共政策が生活の内面にどこまで入るか(入らないか)や研究成果の公表の際の影響力・社会意識に留意すべきであることをお話いただいた。最後に、「発達保育実践政策学」の学問的性格として、発達保育の領域に関わる多様な学問の集合であること、新たな連携・部分的融合・統合が見込まれること、その成果や枠組みの継承がなされることを明示された。

参加者の声

今回は、昨年度に実施してきたIDEA(Institute for the study of Development and Education of“Akachan”)懇談会を発展させた、「発達保育実践政策学セミナー」の第1回ということで、新たなスタートとしての性格をもった会であった。それにふさわしく、学内外から22名の参加者を得ての会となった。新たな学問領域である「発達保育実践政策学」に関して、そのワードに含まれる学問的・実践的背景や意味、本プロジェクトが担う役割の重要性と責任に関して改めて認識する機会となった。5月より着任予定の特任教員・スタッフの紹介もあり、プロジェクトが新たな風とともに本格始動することを感じられた。参加者からも一言ずつお話があり、皆さんがそれぞれの領域のプロフェッショナルであることに基盤の安定感や力強さを感じるとともに、それぞれの領域だけでは解決できなかった問題や持てなかった視点を、学際的な取り組みである本プロジェクトで実現できるのではという期待と希望を持つことができた。次回以降は、昨年度のIDEA懇談会に引き続き、様々な領域の方の話題提供があるとのことで、大変楽しみである。

報告:渡辺はま(東京大学大学院教育学研究科特任准教授)

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