教育学研究科長 挨拶

発達保育実践政策学センター(CEDEP)は、乳幼児の発達や保育・幼児教育の実践、そのための政策に係る研究を推進する「発達保育実践政策学」という新たな統合学術分野の確立をめざして、2015年7月1日に設立されました。乳幼児の保育と教育に関わる課題は、多岐に渡っています。東京大学内の研究者はもとより国内外の研究者や研究機関、子育てや保育・教育を実践している方々やその団体、実践のための制度に関わる国や自治体と連携し、保育・教育の課題を共に探究し、解決の道筋を国際的に発信することを目的とした研究拠点です。
CEDEPが連携する自治体のひとつ、渋谷区では、2020年春に連携事業拠点として「子育て研究室」が区立渋谷保育園内に開設され、翌21年から「渋谷プロジェクト」が進行しています。機会があれば、是非、このプロジェクトから生まれた三篇の冊子『ひかりとまるのファンタジー』『0さいの子どもたちのはっぱ』『OHPのそうぞうとそうぞう』をご覧ください。渋谷プロジェクトは、イタリアで生まれたレッジョ・エミリア・アプローチに想を得たもので、冊子には知覚と感性、言葉と身体を駆使してヒトやモノや自然に接し、感情や思考を表現する子どもたちの姿が生き生きと記録されています。一人ひとりの子どもの感情と思考の表現に耳を傾ける保育者と研究者に支えられ、子どもたちは驚きや問いに突き動かされて「美しさ」と出会い、探究と表現を重ねることで深く豊かに学んでいます。
「あらゆる学問は、保育につながる」
総合大学である東京大学の知の多様性を生かし、皆様と共に、子どもと子どもにかかわる誰もが集い、語らう知の広場=アゴラになることを目指して参ります。これからも、当センターをどうぞ引き続きご支援くださいますよう、お願い申し上げます。
2025年4月
教育学研究科長 勝野 正章
センター長 挨拶

教育学研究科附属発達保育実践政策学センター(CEDEP)は、幼児教育・保育の振興に関する調査研究を推進するために創設された国内大学で唯一の国際政策研究拠点です。2015年に、乳幼児発達基礎科学に基づく保育実践政策の構築を目指して創設され、今年で10周年を迎えます。
CEDEPは、乳幼児期の重要性がクローズアップされるグローバルな状況において創設されました。それから10年、その重要性の認識は、ますます高まっています。人の生涯のウェルビーイングにおいて、乳幼児期の適切なケアと教育が重要であることは言うまでもありません。乳幼児の発達に関わる研究が進展し、ICTやAIなどのテクノロジーが飛躍的な発展を遂げる中で、子どもたちにどのようにして適切な環境や活動を準備するかということの理論的実践的な探索は、私たちCEDEPにとって継続的なミッションとなっています。
もう一方で、子どもたちを市民として社会に位置付けつつ、ともに生きる今と未来をどのようにつくっていくかということも、大切な課題として立ち現れてきています。2023年のこども基本法、2024年のこども大綱には、乳幼児が未来へと育っていく存在であるばかりでなく、今、ここを生きる存在であることが明示されました。どのように子どもたちの声に耳を傾けることができるのか、どのように共に持続可能な社会をつくっていくことができるのか、どのようにモノや他者と呼応しあいながら共に進んでいくことができるのか。こちらの課題についても、理論的実践的な探索を積み重ねていく必要があります。
CEDEPはこれまで、子育て・保育、発達基礎、政策、人材育成の4つの部門において、国、自治体、企業、国内外の他の研究機関等と連携しながら、先端的で探索的な研究に積極的に取り組んできました。また、その知見を生かしつつ、調査研究や実践的なプロジェクトを展開してきています。これまでの研究成果や進行中のプロジェクトの詳細は、CEDEPのウェブサイトをご覧ください。
CEDEPでは、今後も研究活動を継続・発展させ、社会に貢献して行きたいと考えております。そのためには、皆様からのご支援が不可欠な状況です。当センターの活動に賛同いただけるようでしたら、「子育て保育研究支援基金」や寄付講座などを通じてご協力頂けますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
2025年4月
センター長 浅井 幸子